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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)150号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 審決が認定した引例記載の発明の技術内容、並びに、本願発明と引例記載の発明とを対比すると、両者の原料ポリメチレン ポリフエニル ポリイソシアナート混合物は、その中のジイソシアナート成分の含量及びジイソシアナート成分における4,4´―異性体の比率に差異がないから、両者は原料が異なるとはいえず、両者の分離手段は、審決のいう「第一次蒸留」、「第二次蒸留」、「第三次蒸留」の各工程(事実摘示第二の三審決の理由の要点参照)を経て、4,4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)を含有する留出物Dと残留物Eに分離するという蒸留分離経路において一致しており、第一次蒸留及び第三次蒸留において薄膜蒸発器を使用する点並びに各蒸留工程を連続的に操作する点でも変わるところがないこと審決認定のとおりである(ただし、留出物Dが4,4´―メチレンビス《フエニル イソシアナート》を「少なくとも九八%」含有するとした部分を除く。)ことについては、当事者間に争いがない。

2 原告は、本願発明の技術的課題ないし目的は、引例記載の発明のそれとは異なる旨主張するので、この点について判断する。

(1) 成立に争いのない甲第二号証(本件出願公告公報)によると、本件出願公告公報の発明の詳細な説明の項に次の記載があることが認められる。

「英国特許第一二六三四三九号明細書に4・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)をポリメチレンポリフエニル ポリイソシアナート仕込原料から分離する方法が記載されている。記載された方法は一連の分留カラムの使用を必要とし、従つてジイソシアナートを高い温度に、長い時間、望ましくない露出をするようになる。本発明はメチレンビス(フエニル イソシアナート)を高い割合で含有するポリメチレン ポリフエニル ポリイソシアナートの仕込混合物からメチレンビス(フエニル イソシアナート)の部分的分離の改良された連続方法を構成するもの(である。)」(第三欄第四一行ないし第四欄第八行)

「本発明の方法の運転は最終塔底留分に要求されるよりも高い割合のジイソシアナートを含有するポリメチレン ポリフエニル ポリイソシアナート仕込原料から連続的に少なくとも二つの製品、すなわち(ⅰ)非常に高い(九八重量%以上)4・4´―異性体を含有するメチレンビス(フエニル イソシアナート)及び(ⅱ)ポリメチレン ポリフエニル ポリイソシアナートを採取することが容易に理解されるであろう。更にこれによつて仕込原料を高温に長く曝露することがなくなるために、このようなイソシアナートを取扱う際に通常予期される分解、重合及び関連した変化を最小にする。」(第九欄第一〇ないし第二二行)

右の記載の英国特許第一二六三四三九号明細書は引例であるから、右記載によると、ポリメチレン ポリフエニル ポリイソシアナート仕込原料から4,4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)(4,4´―ジフエニルメタン ジイソシアナート、あるいは4,4´―ジイソシアナート ジフエニルメタン)を分離するのに、一連の分留器を必要とする引例記載の発明方法においては、ジイソシアナートを高い温度で長時間曝露する欠点があつたので、本願発明はこのような欠点を改良して、すなわち、ジイソシアナートを高い温度で長時間曝露することのないようにして、イソシアナートを取り扱う際に通常予想される分解、重合及び関連した変化を最小にすることを技術的課題としたものであつて、残留物(未蒸留塔底留分)中の重合体の含有量を少なくし、4,4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)の収率を向上させることを目的としたものであるということができる。

(2) 被告は、引例記載の発明においても、重合体の生成を抑制することを意図していると主張する。確かに、成立に争いのない甲第三号証(引例)によると、引例の第三頁左欄第三九ないし第五四行に、「分留塔の配列及び操作条件によつては、単一蒸留段階を用いて好ましい条件下で九〇重量%以上の2,2´―及び2,4´―異性体を留分Cから分離することができる。しかしながら、理論段数が五〇以上であるか、又は還流比が10:1よりも大きい蒸留塔を用いて濃度を高くすると、滞留時間及び塔底温度が増加し(通常塔内の差圧によつて支配される)、したがつて、ポリマーの形成と4,4´―ジイソシアナート ジフエニルメタンの損失とを来す。それゆえ、蒸留塔を前後に並べるのが望ましい。」と記載されていることが認められるが、右にみたように、本願発明では、重合体の生成を引例記載の発明に比して、より一層抑制することを目的としたものであるというべきであるから、被告の右主張は理由がない。

3 原告は、審決は、本願発明と引例記載の発明との間の相違点について判断するに際して、引例においても、第二次蒸留に関して、種々の態様の蒸留装置が使用可能であることが示唆されており、分留帯域と薄膜蒸発器とを組み合わせて本願発明のように操作することが特に困難を予測させるものと認められる根拠も見当たらないとして、第二次蒸留における多段塔を分留帯域と薄膜蒸発器の組合せに置き換える程度のことは、当業者にとつて、格別の創意を要することではないとしたが、これは誤りであると主張する。

(1) 前掲甲第二号証によると、本件出願公告公報の発明の詳細な説明の項第四欄第九ないし第三八行に、本願発明における第二次蒸留について次の記載があることが認められる。

本願発明による「改良は次の(a)ないし(f)段階を包含するものである。

(a) 該仕込混合物を減圧の下で薄膜蒸発器中で連続的に第一次部分蒸留にかけて前記蒸発器からメチレンビス(フエニル イソシアナート)を連続的にオーバーヘツドとして抜き出し、そしてポリエチレン ポリフエニル ポリイソシアナートを未蒸留塔底留分として回収し、

(b) 該第一次部分蒸留からの該オーバーヘツドを分留帯域に連続的に送り、

(c) 該分留カラムから2・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)の富化されたオーバーヘツド部分を連続的に除去し、

(d) 該分留カラムからの塔底留分を第二薄膜蒸発器への仕込液体として連続的に送り、そこで該仕込原料を減圧の下で、該仕込原料の部分をオーバーヘツドとして回収するために第二次部分蒸留にかけ、

(e) 該第二次部分蒸留からの該オーバーヘツド留分を前の段階で使用した該分留カラムに連続的にもどし、

(f) 該第二次部分蒸留からの該未蒸留塔底留分を減圧の下で第三薄膜蒸発器中で連続的に第三次部分蒸留にかけてオーバーヘツドとして少くとも九八%純粋の4・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)を採取し、メチレンビス(フエニル イソシアナート)残留物を未蒸留塔底留分として採取し、その際該オーバーヘツドは第三次薄膜蒸発器への仕込原料の大割合より成つている。」

この記載を第二次蒸留における態様でみてみると、

<1> 第一次蒸留のオーバーヘツド留分であるメチレンビス(フエニル イソシアナート)が分留帯域に送り込まれる。

<2> この分留帯域からは、2,4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)の富化されたオーバーヘツド部分が連続的に除去され、また、分留帯域の塔底留分は第二薄膜蒸発器に連続的に送られる。

<3> この第二薄膜蒸発器のオーバーヘツド留分は連続的に分留帯域に戻され、また、第二薄膜蒸発器の未蒸留塔底留分は第三薄膜蒸発器に送り出される。

という工程内容になる。

(2) ところで、前掲甲第三号証によると、引例には、第一次蒸留をして得たジイソシアナートを第二次蒸留することについて、次のとおりの記載があることが認められる。

<1> 「また分留塔の前方に三~一〇トルの減圧で操作される蒸留槽を設けてもよい。この蒸留槽を用いる目的は、分留塔内で用いられる高度の真空の妨げとなる痕跡量の溶剤を除去することにある。またこの蒸留槽は、一五〇℃以上の温度で鉄塩化物を塩素含有不純物に接触させるための容器としても役立つ。」(第三頁左欄第一二ないし第二二行)

<2> 「いくつかの分留塔を直列に配置することができる。その場合には、先行塔からの塔頂生成物を後続塔に仕込み、塔底生成物を先行塔への供給流に混入する。この配列により、低圧力損失、すなわち、低塔温度で各塔を操作することができる。その理由は、必要な分離ユニツトの数をいくつかの塔に分配できるからである。またイソシアナートからのポリマー形成を低減することもできる。」(同第二三ないし第三四行)

(3) 審決は、引例の右(2)<1><2>の記載を、「引例においても、第二次蒸留に関して、必要により多段塔の前に簡単な蒸留器を組み合わせたり多段塔を数個直列に配置することも可能である旨記載されている(第三頁左欄第一二ないし第三四行)」と要約した上、引例には、該記載「から明らかなように、種々の態様の蒸留装置が使用可能であることが示唆されている。そして、一つの蒸留分離工程を行うに当たつて、分留帯域と薄膜蒸発器とを組み合わせて本願発明のように操作することが特に困難を予測させるものと認められる根拠も見当たらない。」と認定したので、この点の当否について検討する。

ア 引例の右(2)<1>の記載個所には、分留塔(多段式蒸留塔。審決での呼称は多段塔)の前方に、蒸留槽(審決での呼称は蒸留器)を設ける態様が示されているが、この蒸留槽を設ける目的は、第一次蒸留をして得たジイソシアナートに溶剤が含まれていると分留塔内を高度に真空にする妨げになるので、その痕跡量の溶剤をあらかじめ除去しておくことにあることが、引例の右記載から明らかである。そうすると、この蒸留槽でのこの処理は、第二次蒸留の前処理にすぎないものということができる。

他方、本願発明においては、分留塔(分留帯域)の塔底留分を処理する目的で、第二次蒸留を行うために第二薄膜蒸発器を設けるものであることが、本件出願公告公報の前記第四欄第九ないし第三八行の記載から明らかである。そして、前判示のとおり、ジイソシアナートを高い温度で長時間曝露するという引例の欠点を改良しようとしたのが、本願発明の目的であるから、この第二薄膜蒸発器を設けたのも、この目的に沿うものと認められる。

そうすると、引例記載の発明が開示している、分留塔の前に蒸留槽を設けるという構成と、本願発明における、分留塔の後方に薄膜蒸発器を設けるという構成とは、構成自体が異なるのみならず、その採用の目的も異なるものということができる。したがつて、引例記載における右の構成が、本願発明の第二薄膜蒸発器を用いる第二次蒸留の態様を示唆しているということはできない。

イ 次に、引例の前記(2)<2>の記載個所には、いくつかの分留塔を直列に配置する態様が示されているが、この記載個所では、先行塔からの塔頂生成物を後続塔に仕込み、後続塔の塔底生成物を先行塔への供給流に混入するという配列とすることによつて、低い塔底温度で各塔を操作でき、イソシアナートからのポリマー形成を低減することができるとし、その理由として、必要な分離ユニツトの数をいくつかの塔に分配できることが掲げられている。そして、この理由に挙げられている点は、前掲甲第三号証により認められる引例の引き続いての記載、すなわち、第三頁第三九ないし第五六行の「分留塔の配列及び操作条件によつては、単一蒸留段階を用いて好ましい条件下で九〇重量%以上の2,2´―及び2,4´―異性体を留分Cから分離することができる。しかしながら理論段数が五〇以上であるか、又は還流比が10:1よりも大きい蒸留塔を用いて濃度を高くすると、滞留時間及び塔底温度が増加し(通常塔内の差圧によつて支配される)、したがつて、ポリマーの形成と4,4´―ジイソシアナート ジフエニルメタンの損失とを来す。それゆえ、蒸留塔を前後に並べるのが望ましい。分留を繰り返すことにより、九五%以上の純度を有する2,2´―及び2,4´―異性体を得ることが可能である。」との記載からみて、高度に分離するのに必要な段数を備えた大きな蒸留塔(分留塔)をいくつかの蒸留塔(分留塔)に分割して用いることを意味しているものと解されるところである。

ウ 右にみたところによると、引例の前記(2)<2>に記載された態様は、分留塔を低い塔底温度で操作できるようにし、イソシアナートからのポリマーの形成を低減させる工夫として案出されたものであるが、該態様は単に分留塔のみを用い、分留塔を直列に配置することによつて達成できることが開示されているものということができる。

エ これに対し、本願発明にあつては、本件出願公告公報の発明の詳細な説明の項の前記第三欄第四一行ないし第四欄第八行における記載、これに続く第四欄第九ないし第三八行の記載から明らかなとおり、引例に記載された方法においては、一連の分留塔を必要とし、したがつてジイソシアナートを高い温度に、長い時間、望ましくない露出をするようになるという欠点があるとの認識のもとに、この欠点を改良すべく、単に分留塔のみを数個配置するのではなく、分留塔と薄膜蒸発器とを組み合わせることとしたものであり、しかも、本願発明の第二次蒸留においては、分留器の塔底留分を第二薄膜蒸発器に送り、第二薄膜蒸発器からのオーバーヘツドの留分を分留器に戻すようにしたものであり、このような分留塔と薄膜蒸発器との組合せの態様は、引例が開示している前判示のような複数の分留塔のうちの後続塔を単に薄膜蒸発器に置き換えただけでは得られないものというべきである。

(4) 被告は、本願発明の第二次蒸留におけるように、二本の塔を、先行塔の塔底留分を後続塔に供給し、後続塔の塔頂留分を先行塔に戻すように配置した装置が種々の化合物の蒸留分離において広く行われていたと主張し、その一例として、乙第一号証の一ないし四(「蒸留工学ハンドブツク」昭和四五年七月三〇日株式会社朝倉書店発行の第八〇〇頁、第八二九頁)の記載を挙げる。

しかし、引例記載の発明では、ジイソシアナートの混合物を対象とする分留において、いくつかの分留塔を直列に配置することができるとし、この場合には、先行塔からの塔頂生成物を後続塔に仕込み、後続塔の塔底生成物を先行塔への供給流に混入し、低い塔底温度で各塔を操作できるようにしていること、前記(3)のイで判示したとおりである。他方、成立に争いのない乙第一号証の一ないし四によると、右「蒸留工学ハンドブツク」第八〇〇頁の記載(別紙図面(3))は、エチルベンゼンとスチレンを分離する工程に関するものであり、第八二九頁の記載(別紙図面(4))は、エチルベンゼンとキシレン類を分離する工程に関するものであることが認められるのであるから、右各記載は、ジイソシアナートの混合物の分留工程に関して、引例記載の発明における分留塔の並列と異なる配列の採用が、広く行われていることを認める資料となし得るものではないというべきである。蒸留が対象混合物の沸点差に基づく分離手段として共通性、汎用性がある技術であるということを理由に右判断を覆すことはできない。

そして、後続塔として、流下薄膜型蒸発器に特定して使用することも、当業者に広く知られているとする被告の主張事実を認めるべき証拠はないし、被告が流下薄膜型蒸発器の使用についての記載があるとして援用する引例第二頁右欄第八七ないし第九一行の記載(事実摘示第三の二2(1)参照)も、複数の蒸留塔を設けた特定の蒸留工程における後続塔を流下薄膜型蒸発器に特定して使用することについての記載でないことは、いうまでもない。

以上によれば、前記(2)<1><2>の記載を要約した上、「引例においても、(中略)種々の態様の蒸留装置が使用可能であることが示唆されている。そして、一つの蒸留分離工程を行うに当たつて、分離帯域と薄膜蒸発器とを組み合わせて本願発明のように操作することが特に困難を予測させるものと認められる根拠も見当たらない。」とした審決の認定、判断は是認することができず、したがつて、右認定、判断に基づいて、「引例において第二次蒸留における多段塔を分留帯域と薄膜蒸発器の組合せに置き換える程度のことは、当業者ならば格別の創意を要することではない」とした審決の認定、判断は誤りであるというべきである。

4(1) 本願発明の作用効果について判断するに、前掲甲第二号証によると、本件出願公告公報の第一〇欄第三九行ないし第一一欄第二行に、

「蒸発器Dから回収された未蒸留塔底留分は次の分析値

含有量%     98.4%

(「分有量」とあるのは「含有量」の誤記と認める。)

4,4´―異性体%  99.9%

色度APHA>100

を有するメチレンビス(フエニル イソシアナート)であつた。」

と記載されていることが認められる。この記載は、未蒸留塔底留分中のメチレンビス(フエニル イソシアナート)の含有量が九八・四%であり、このメチレンビス(フエニル イソシアナート)の九九・九%は、4,4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)であつたことを意味しているものと読み取ることができる。

この記載によると、第三薄膜蒸発器から回収された未蒸留塔底留分中のメチレンビス(フエニル イソシアナート)以外の成分の量は、一・六%であるということになるが、ここには、このメチレンビス(フエニル イソシアナート)以外の成分の内容についての記載はない。しかし、成立に争いのない甲第四号証の一(ハワード、アール、ステイール作成の宣誓供述書)によると、原告の化学技術担当者である同人の監督の下に行われた分析実験において、本願発明における第三薄膜蒸発器からの未蒸留塔底留分中のメチレンビス(フエニル イソシアナート)以外の唯一の主要成分はメチレンビス(フエニル イソシアナート)のダイマーであるとの分析結果が得られたこと、右未蒸留塔底留分中にメチレンビス(フエニル イソシアナート)の熱処理によつて誘導されるいくらかのポリマー状物質が含まれているとすれば、その量は二〇〇ppm以下であると結論づけられることが認められるところからすると、第三薄膜蒸発器からの未蒸留塔底留分中のメチレンビス(フエニル イソシアナート)以外の成分には、ポリマー状物質はほとんど含まれていないものと認めることができる。

(2) 一方、審決が認定したように、引例に、残留物を落下型薄膜蒸発器を用いて分留して少なくとも九八重量%が4,4´―ジフエニルメタン ジイソシアナートである留分Dと、残留物Eとに分離するとの点が記載されていることについては、当事者間に争いのないところである。そして、前掲甲第三号証によると、引例の特許請求の範囲第一項に、「高温重合の結果として形成される残留分E」との記載があることが認められ、残留分Eには、高温重合の結果として形成されるポリマーが含まれることが明らかにされている。

引例には、さらに、前記の第三頁左欄第二三ないし第三四行中に、「いくつかの分留塔を直列に配置することができる。(中略)またイソシアナートからのポリマー形成を低減することもできる。」との記載があり、同じく前記第三頁第三九ないし第五六行中に、「(前略)理論段数が五〇以上であるか、又は還流比が10:1よりも大きい蒸留塔を用いて濃度を高くすると、滞留時間及び塔底温度が増加し(通常塔内の差圧によつて支配される)、したがつて、ポリマーの形成と4,4´―ジイソシアナート ジフエニルメタンの損失とを来す。それゆえ、蒸留塔を前後に並べるのが望ましい。」との記載があるが、これらの引例の記載も、引例記載の発明において、残留分Eに高温重合の結果として形成されるポリマーが含まれることを否定するものではない。

(3) そうすると、本願発明においては、引例記載の発明において残留分Eに形成されるポリマーの形成をなくし得る点において、引例記載の発明とは異なつた作用効果を奏し得るものというべきである。

5 してみれば、原告主張のその余の点について判断するまでもなく、本願発明は、引例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとした審決の判断は誤りであつて、取消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

メチレンビス(フエニル イソシアナート)を少なくとも五〇重量%含み、且つその4・4´―アイソマーの含有量が少なくとも九五%である、ポリメチレンポリフエニル ポリイソシアナートの混合物の仕込原料より、少なくとも九八%純粋の4・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)を部分的に取り出す連続的方法において、

(a) 減圧下の薄膜蒸発器中において該仕込混合物を連続的に第一次部分蒸留にかけて、該薄膜蒸発器より連続的にオーバヘツドとしてメチレンビス(フエニル イソシアナート)を、そして未蒸留塔底留分としてポリメチレンポリフエニル ポリイソシアナートを抜き出し、

(b) 該第一次部分蒸留からの該オーバヘツドを連続的に分留帯域に送り、

(c) 該分留帯域から2・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)の富化したオーバヘツド留分を連続的に除去し、

(d) 該分留帯域からの塔底留分を第二薄膜蒸発器に液体仕込原料として連続的に送り込み、その中で減圧の下で、該仕込原料を第二次部分蒸留にかけて該仕込原料の一部をオーバヘツドとして回収し、

(e) 該第二次部分蒸留からの該オーバヘツド留分を連続的に先の段階で使用した該分留帯域にもどし、

(f) 該第二次部分蒸留からの該未蒸留塔底留分を第三薄膜蒸発器中で、減圧の下で連続的に第三次部分蒸留にかけ、オーバヘツドとして少なくとも九八%純粋の4・4´―メチレンビス(フエニル イソシアナート)を採取し、そして未蒸留塔底留分としてメチレンビス(フエニル イソシアナート)残留分を回収し、そのオーバヘツドは該第三薄膜蒸発器に送る仕込原料の大割合からなることを特徴とする方法。

(別紙図面(1)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(1)

<省略>

(以下省略)

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